甘くて優しい青春恋物語 ~両片思いはチョコレートのように苦くて甘くて~

「……っ、や、ひ……?」

「何で。」

「……え?」

「今年はチョコ、何で作ってくれないの?」

 どういう、事……?

 振り向いた瞬間、真剣な瞳に囚われる。

 やひのこんな視線、初めて見る……。

 それに、何でって……。

「だってやひ、バレンタイン嫌なんでしょ? だったら少しでも、チョコ減らしたほうが……」

「確かに、俺にとってバレンタインは苦痛でしかないし、嫌だ。できればなくなってほしい。」

「だ、だったら……」

「でもそれは、他の女子からの、だけだ。」

 ……え?

 他の女子から、の……?

 やひが言っている事がさっぱり分からなくて、何度も瞬きをする。

 ……そんな言葉、勘違いするじゃん。

 まるでやひが、私のチョコを待ってくれてるって……思うじゃん。

「で、でも私はもう作らないって決めたの! 高校生にもなって作るのってどうかと思うし、もうそんな子供じみた事したくないだけだから!」

 そう言って私はソファから腰を上げ、自分の部屋へと向かった。

 リビングを出る間際、やひにこう言い放つ。