甘くて優しい青春恋物語 ~両片思いはチョコレートのように苦くて甘くて~

 やひから視線を逸らして、テレビ画面に向ける。

 そのせいで今、やひがどんな顔をしているのかは分からない。

 ……別に知らなくても良いんだけど。

 ぼんやりそう考えていると、ニュースが終わりドキュメント番組が始まった。

 ……今は、やめてほしいなぁ。

 そのドキュメント番組の内容に、思わず視線を下げた。

 正直今は、見たくない。

《というわけで本日は、もうすぐそこに迫ったバレンタイン特集です!》

 だけど、耳を塞いでいるわけじゃないからすぐに分かってしまう。

 バレンタイン……そうだよね、もう何日かしたら来るんだよね。

 来なくてもいいのに……。

 そうすればここまで引きずる必要もないし、気にしなくてもいいのに。

「そっか……あと二日でバレンタインか……。」

「忘れてたの? 帰る時私バレンタインの話題振ったのに。」

 やひも人のこと言えないじゃん、と笑ってみせる。

 そんな私にやひは、心底呆れたようなため息を零した。

「興味があるわけでもないから、気にしてないだけ。俺にとっては、苦痛でしかないしさ。」