「はいはい、拗ねんなって。」

「別に拗ねてないし。」

「拗ねてんじゃん。」

 確かに、拗ねてるかもしれない。

 だけど実際忘れっぽいのは否めないから、返す言葉が見当たらない。

 言い返せないの、何気に悔しい……。

 やひのくせに、そういう煽り方は得意なんだよなぁ……。

 やひに対する悪態を浮かべながら、キャラメルに手を伸ばす。

 そのまま口の中に放り投げて、片手でテレビのリモコンを操作した。

 やひは私の隣に座って、優雅に紅茶を嗜んでいる。

 ……あぁ、やっぱりやひに対してだけだ。

 さっきからバクバクとうるさいと言ってしまうくらい心臓が高鳴っていて、呼吸が上手くできなくなる。

 触っていないけど、きっと私の顔は火照っているだろう。

 ちらっとやひのほうを見ると、何故か視線が交わった。

 ……ん? やひ……?

 何だか、やひらしくない……。

 直感でそう思い、少しだけ小さな声でやひを呼ぼうとする。

 だけど、何となくやめておいた。詮索するの、得意じゃないし。

 もしかして、さっきからずっと私のほうを見ていたのだろうか。

 ……なんて、自意識過剰だよね。