家に帰って早々、やひは慣れたようにキッチンへと行く。

 ……いや、実際慣れてるんだけども。

 やひが私の家に来るのは、もう何度目か数える気がない。

 私がやひの家にある事も何度もあるし、別に今更気にする事でもない。

 だけど……好きな人だって自覚しているから、平静を保っていられる自信がない。

 それでも私はバレないように、必死に普通通りに頑張る。

「やひ~、戸棚にあるキャラメル取って。」

「ん。紅茶入れていい?」

「いいよ~。」

 私がお願いすると、やひはすぐに行動に移してくれる。

 どこに何があるのかきちんと把握していて、キッチンから音が聞こえる。

 やひは私よりも家事手慣れてるから、ちょっと羨ましいかも……。

 下手したらやひのほうが女子力高いんじゃ……なんて言ったら怒られそうだけど。

「茉優、これで良かったか?」

「やひさんきゅ。あとこれ、借りてた漫画。」

「ちゃんと覚えてたんだな。いつもすぐ忘れる癖に。」

「うるさいよやひ。返したんだから良いじゃん。」