「もうすぐバレンタインだね、茉優ちゃん……って、どうしたの?」

「……うぅっ、葉月ぃ。」

 私はどこにでもいる普通の女子高生、天宮茉優(あまみやまゆ)

 まだまだ寒い季節が続くある日、友達の葉月にそう言われた。

 きっと葉月は楽しみなんだろう、今年のバレンタイン。

 だけど私は、楽しくなんかない。

 どちらかというと……来てほしくない行事だ。

「どうしてそんなに落ち込んでるの? 茉優ちゃん、あげる人……いるよね?」

 確認のように尋ねてきた葉月は、純粋そう。

 何でこの子はこんなに純粋なのだろう……そう思う。

 私は葉月の言葉に、はぁ……とため息を吐いた。

「……私、あげても相手にされてないから。正直のところ、あんまり気が進まない……。」

「あっ……そ、そっか……。」

 私の言葉に心当たりを思い出したのか、苦笑いを零す葉月。

 そんな彼女の表情を見て、私も口角を引きつらせた。

 バレンタインに、チョコを上げる相手はいるにはいる。