(大和の隣にいるべきは私のはずだったのに、私以外にはいないはずだったのに・・・。)


そう思って唇を噛み締める。でもこうなってみて、思い知らされたこと。それは大和にとって自分は本当に


「生まれてから、ずっと一緒にいる大の仲良しの幼なじみ」


でしかなかったという現実だった。これまでクリスマスイブに綺麗なイルミネ-ションを一緒に見に行っても、お正月に一緒に初詣に行っても、バレンタインデーにチョコをあげても、ホワイトデ-にお返しをもらっても、大和にはそれは、幼い頃から当たり前のように一緒にいた、その延長線のことに過ぎなかったのだ。


だからそれらのイベントで、自分の横にいるのが弥生に代わっても、大和は戸惑いも七瀬に対する後ろめたさも見せなかった。同じイベントでも、彼にとっては、その意味が全く違っていたからだ。


「ねぇ七瀬、このままでいいの?」


今までの2人の仲の良さを知る友人の中には、こんなことを言って来る者もいた。それに対して


「いいも悪いも、大和は佐倉さんとカレカノになったんだから、一緒にいるのは当然でしょ。私といる時間は確かに減ったけど、だからって私たちがもう話も出来ないとかそんなこと全然ないし。私と大和は今までもこれからも大切で仲のいい幼なじみであることは変わらないんだから。」


七瀬は笑ってそう言ってはいたが、その言葉がウソであることは、誰よりも自分が一番よく分かっていた。悔しい、諦めきれない、その思いが高じて、告白しようと決意したこともあったが、出来なかった。


自分がなぜ、あんなことをしたのか。その真意を知った時、大和はどう思うだろう。きっと軽蔑されるだろう、嫌われるだろう。そうなったら私は、大和の幼なじみですらいられなくなる・・・その恐怖が七瀬を躊躇させた。


3年生になり、久しぶりにクラスが別になったのを奇貨として、七瀬は本格的に大和に距離を置いた。受験勉強が忙しくなったのもこうなるとありがたかった。そして、彼と進学先が間違っても重ならないように慎重にリサ-チし、無事大学進学が決まると、家を出た。決して通えない距離ではなかったが、お隣さん同士の幼なじみとして、これ以上、大和と弥生の寄り添う姿を見守ることには、もう耐えられなかったからだ。


(結局自業自得、それ以外の何ものでもなかったんだよ・・・。)


後悔と敗北感を抱えたまま、七瀬は住み慣れた実家を後にした。


そして時が流れて・・・。


仲睦まじい2人の様子を久しぶりに目の当たりにした。大和からは、弥生との婚約を何の屈託のない表情で報告された。そんな残酷な現実に、胸が潰れる思いを抱きながら、七瀬は家路についた。そうするしか、なかった・・・。