話はここで終わり、ふたりはすっかり冷めてしまった料理を口に運び始める。それからは、話題は普段のふたりらしい他愛もない内容になって、デザ-トまで順調に食べ進めて行った。


やがて食後のコーヒ-が運ばれてきて、それを口にしながら、話を続けていたが、ふと


「ねぇ、沙耶。」


七瀬は改めて親友に呼び掛けた。


「うん?」


「いつまで待てば、大和は私の思いに向き合ってくれるようになってくれるかな?」


そう言って、真っすぐに自分を見る七瀬からの突然の問いに


「えっ、それは・・・。」


沙耶は咄嗟に答えることが出来ない。


「本当に好きなら、その時が来るのを例え何十年でも、お婆さんになっても待つべきなのかな、やっぱり?」


「それは・・・正直、七瀬の気持ち次第だと思う。」


「そっか、そうだよね・・・。」


沙耶の言葉に、七瀬は少し物思いに沈む。そんな彼女を少し見ていた沙耶は


「どうしたの?急に。大和くんのこと、諦めるの?」


と尋ねる。


「諦めないよ。だから私、決めた。」


「えっ?」


「大和に想いをぶつけるよ、もうそんな遠くない時期に。さっきも言った通り、直接言ってないだけで、私の気持ちを大和はもう知ってるんだから。だったら、遠慮してても意味ないよね。それにさ。」


「うん?」


「私にはずっと大切に思ってる人がいる。でもそれを知りながら、そんな私を大切に思ってくれる人も、私には・・・いる。」


「七瀬・・・。」


その七瀬の言葉に、沙耶はハッとした表情で彼女を見た。


「私が本当に大切しなければならないのは、どちらの人なのか、そろそろちゃんと決着を付けないといけないんだよね。自分でもそんなこと、よくわかってたはずなのに、どうしても前に進む勇気が出なかった。でも私は佐倉さんに、とうとう逃げ道を塞がれてしまった。そして今日、こうして沙耶ともいろいろ話して、もう前に進むしかないんだって、やっと腹を括れた。」


「そっか・・・。」


「ズルいよね?私。いろいろな意味で・・・。」


そう言って、表情を曇らせた七瀬に


「ズルくなんかないよ、絶対に。」


沙耶は言い切った。そんな親友の顔を見て


「沙耶、ありがとうね・・・。」


七瀬は笑顔で頷いた。