ちょっと必死過ぎたかもしれないが、セドリック様の顔を見ると紺藍色の瞳が暗がりの中でも美しい宝石のように煌めく。
 私の胸を射抜くような熱のこもった視線にドキリとしてしまう。私を横抱きにして私のベッドではなく、セドリック様の部屋の寝室へと歩き出した。

「ではこちらで。私の部屋の方がベッドも広いですし……。あ、前回の失敗を活かしてクッションで寝る場所を区切りますから、不用意に抱きしめて添い寝なんてしませんので、ご安心ください」

 防音魔法があっても、雷は怖い。クッションを挟んでも一人だと眠れるかどうかわからず、セドリック様に縋りつく。今ある体温が離れてしまうのが怖くて堪らない。
 一人は嫌だ。そう私の心が叫ぶ。

「オリビア?」
「怖いので、手を繋いだまま寝てもいいですか?」
「もちろんです。オリビアが希望するのでしたら添い寝でも腕枕でもいくらでもしましょう!」

 セドリック様は飛び切りの笑顔で応えてくれる。作り笑顔ではなく心からの笑顔に何度も癒された。今もそうだ。この笑顔に、優しさに何度救われただろう。
 私の部屋のベッドよりも倍以上大きくて、セドリック様の香りがする。もぞもぞとベッドで寝返りを打ちつつセドリック様と手を繋いでもらって横になった。

「小動物のようで可愛らしいですね。ああ、今日はいい夢が見られそうです」とセドリック様は浮かれた言葉を私に投げかける。
 この人はずっと私に愛を囁いて、大切にしてくれる。けれどそれは私の技術や能力を利用したいとかではなく、純粋に私のことを慕ってくれている。それが最近ちょっとずつだが受け入れられるようになったのだ。
 自分の中で芽生えている感情に名前を付けるとしたら──きっと。