そのまま私室に戻り、程なくして朝食が運び込まれてきた。

 美味しそうなオムレツに、カリカリのベーコンが添えられて、具沢山のスープは野菜の旨みがギュッと詰まっている。焼きたてのパンはバターが香り食欲をそそった。
 他にもサラダや季節のフルーツなど盛りだくさんで、いつも美味しい料理を作ってくれる厨房の方々には感謝しかない。

 準備が整ったところで、私の伝言を聞いたフィル様が部屋にやってきた。
 若干顔色が悪く、これは治癒魔法が必要かと注意深く観察する。

「ねえ、ラティ。私室で朝食を摂るって聞いたけど、ひとりで食べるつもり?」
「おはようございます。フィル様の分もこちらに運んでもらうよう手配してあります」
「僕も? どういうこと?」
「エルビーナ様に私室で朝食を摂れと言われましたので、そのようにいたしました。朝食の席も健康観察の場ですので、これも業務の一環です」
「は……はははっ! ふふっ、なるほど、ラティは最高だね。ではここでゆっくりといただこう」

 ここまで話すとフィル様の顔色はいつもの様子に戻ったので、心配いらないようだ。

 いつもよりご機嫌なフィル様に、私も笑みがこぼれた。昨日の今日で気持ちを伝える勇気はまだないけれど、私もフィル様のように態度でしっかり示していこうと思う。

 今頃、食堂でギャンギャン騒ぐエルビーナ様を思い浮かべて、ちょっとだけスッキリしたのは内緒だ。
 それから食堂の担当者たちに迷惑をかけてしまったので、後で無償で治癒魔法を提供しようと心に誓った。