あのお茶会から一週間が経ち、ルノルマン公爵の判定結果を待つだけとなっていた。
 入浴などを済ませるために、ラティと別行動になったタイミングでアイザックが書類の束を差し出してきた。今渡すということはラティには聞かれたくない内容ということか。

「フィルレス様、こちらがあのふたりの報告書になります。思ったよりも持ちませんでした」
「え? もう? だってまだ一週間くらいでしょ?」

 あのふたりとは、カールセン元夫妻のことだ。僕はその後の経過を報告するように指示していた。こんなに早いとは思わなかったけれど。

「そうなんですが、追放されたその日からいろいろとやらかしたみたいです」
「へえ、少しは反省したかと思ったけど、ダメだったんだ。まあ、それはどうでもいいよ。結果だけ読ませてもらう」

 その後、領地にいたマクシスの愛人には手切金を渡して追い出し、マクシスは無一文で詐欺師が横行する第九街区へ送られ、一週間で奴隷商人に売り飛ばされた。

 奴隷の取引は違法なものだから、なんの保証もない。去勢された奴隷など、労働者かサンドバッグの役目の需要で取引されたと考えられる。

 どちらにしても劣悪な環境で命すらも搾取されるのだ。ラティを傷つけた男は、もうこの国にはいない。

 ビオレッタは娼館に売られ、そこそこ客がついた。しかし、その客のひとりと逃亡を図りあえなく捕まり、私刑を受け行方不明になったそうだ。

 こちらは生存の可能性は限りなく低いだろう。生きていたとしてもまともな生活が送れるとは思えない。

 こうして僕のラティを騙して裏切ったふたりは、この国から姿を消した。