――さて……これはどうしたものかな。

 大衆の喧騒が治まり、再びプログラムの進み出した舞台をぼぉっと眺めながら、シャニは(おとがい)(さす)り考えを巡らせた。

 一度舞踊が大きく崩れた以上、明らかに彼女を優勝させる訳にはいかなかった。――が、彼女が欲しい。この矛盾を解消させる方法に、シャニは頭を悩ませ始める。

 そしてまたナーギニーの母親も、あのラクシャシニーの母親と同様、怒りと悔しさを何処へぶつけたら良いのか分からないように、狂気に満ちた顔で夫の胸を叩き続けていた。

「どうして……! どうしてナーギニーはいざって時にチャンスを(のが)すんだい! あと少しでシャニ様に気に入られる筈だったのに……あともう少しで、わたし達だって……!!」

 三年前の選良披露、十四歳のナーギニーは高熱で候補に選ばれることさえ叶わなかった。それでも娘を責めることなく何事もなかったように日々振る舞い、更に三年大事に育ててきた苦労を思えば、今度こそは報われても良いというものだろう……母親の打ちひしがれた姿は、絶望以外の何物でもなかった。眠りに落ち込んだ娘を恨めしそうに覗き込み、母親は再び真っ黒で骨の突き出た細い腕の中でむせび泣く。その背後では祖母が俯いて立ち尽くし、兄と妹は隣の寝台の上、捨てられた子猫のように膝を抱えてうな垂れていた。