昼食を楽しむ家族を見つけたナーギニーは、広場まで付き添ってくれたシュリーとしばしの別れを惜しんだ。真上に昇った(あぶ)るような太陽の(もと)、様々な露店から買い集めた料理が、湯気を立ててテーブルに並べられている。(なご)やかな食事が続く中、ナーギニーの合流に興味を示したのは母親一人だけであった。それも自分達の『糧』が無事に戻ってきたという安堵と、舞踊に向けて精を付けさせたいというだけの、愛情に欠けた理由に過ぎない。

 シュリーのお陰で元気を取り戻したナーギニーではあったが、余り食欲の方は優れなかった。揚げた油の酷い臭いの所為(せい)だろう。少女は離乳食も兼ねるダル豆のカリーを一皿選び、米とスパイスを炊き込んだ野菜のビリヤニを小さく盛り付け、僅かに胃に収めただけに留まった。

 数える程の木陰や建物の陰は、照りつける日射から逃げてきた人々で溢れ返っている。一旦自宅へ戻る程の時間がない為、ナーギニーは再びの舞踊開始時刻まで、余興見物に連れ回されるしか他なかった。