「美しい娘よ、我が前で踊るが良い」

 軽やかな足取りで舞台中央に躍り出たシュリーは、深い一礼と共に上方へ語りかけた。それを満足したように太い指で顎を(さす)り、シャニが返答を投げ落とす。

 しとやかな音楽が鳴り響きシュリーが舞い踊る。ナーギニーはその光景に直ちに見入ってしまった。それほど美しくしなやかな身体の流れであった。

「シュリー……」

 唖然としたまま、それでもやっとのことで彼女の名を呟き、ナーギニーはその名を紡いだ唇に指を添わせた。少女の視線はシュリー一点に注がれ、指先の繊細な動きさえ見逃さぬよう、瞬くことも忘れてしまう。ナーギニーの小さな声はシュリーに聞こえる筈もなかったが、その刹那シュリーはナーギニーの存在を見つけたように、そちらに向けてウィンクをした。〝わたしの踊りを良く見ておくのですよ〟――まるでそう伝えるかのように。

 大きな動きの中から壮大な物語のうねりが描き出され、手先の微妙な揺らぎが登場人物の複雑な心情を表していく。時には鋭く時には柔らかく、全身をくねらせて幾つもの輪を渦巻いていく。長い睫に彩られた色気のある瞳は、恋の切なさや(はかな)さを巧みに表現し、華やかな丸みのある唇は、情熱的な愛と勇気を讃えるよう(あで)やかに花開いた。