冷たい風がナーギニーの涙を(さら)っていった。むせび泣く声も砂をこする風の()が、共鳴し反響し不協和音に変えてしまう。それはシュリーの(もと)へ無事届いただろうか? 西南の尖塔と墓廟が威圧する狭間の基壇上で、ナーギニーは立ちすくんだまま両手で顔を覆った。

 細い指の隙間から零れる涙は、(すく)っては落ちる砂のようだ。しっかり握ったつもりでも、希望とは違う方向へ流されてゆく。左肩に掛けたサリーの裾も少女の身体を温めようとはせず、この場から逃げ出したいように舞い上がっては渦を描いた。

 永久不変という存在しない筈の力に誘導され、もうこの(とき)が終わりを告げることはないのかもしれない。泣き声が次の嗚咽(おえつ)を紡ぎ出しては絡まり、また紡ぎ出し……ナーギニーはとうとう自らが編み込んだ(いばら)(おり)に閉じ込められてしまった。



 けれどそれは突如として解き放たれる。