こんな砂だらけの荒廃した時代においても、人々は死に、また生まれるという平凡なサイクルを幾度となく重ね合わせ、自らの子孫を絶やさぬよう、生理的な行ないだけは連ねることをやめなかった。

 十七年前――。

 砂による影響の極めて少ない、(いにしえ)より『アグラ』と呼ばれた街の商人(ヴァイシャ)の家に、その少女は生まれた。(註1)

 祖母、父、母、兄、そして後に生まれることとなる妹と、その少女の六人から成る家族。身体の弱りきった産後間もない母親は、その子が娘であることを知って、どれほど嘆き悲しみ悔しがったのかしれない。数百年、数千年の昔から「歓喜の権化たる息子は、悲哀の塊たる娘に遙かに勝る」のだ《岩波文庫『カター・サリット・サーガラ』より》。残念ながら女は利益をもたらさない、手間の掛かるだけの産物でしかなかった。

「今なら殺してしまうことも出来る。今なら間に合う」

 年老いた産婆に慰められながらも、彼女は一つの決意をしていた。



 この娘を、世界一の美女(モハーナ)に仕立てようと。