【砂の城】インド未来幻想

 ラクシュミーもまた、過去を振り返り胸を熱くした。パールヴァティーが次の世に転生するという直前、パールヴァティー自身もシャニの呪いに気付いていた。「この眠りについてしまったら、目覚めた時には全てを忘れてしまう……ごめんなさい、シュリー。きっと貴女のことも……」そう言って涙ながらに必死に詫びた面差しも、ついにその瞬間「さようなら、シュリー……」そう哀しそうに呟かれたことも――だからこそ自分も人間界に転生し、彼女と出逢える機を待ったのだ――親友を失うなど、彼女とて耐えられる現実ではなかったのだから。そして同時に我が身を誇らしく思う。シヴァまでもが記憶を奪われていたという怖しい状況に、光明を差し込めたのは自分だ。取り返しのつかない結末に惑わされず、事なきを得られた。(註1)

「わたしは一旦主人の許へ戻るわね。「ひと仕事」を終えたら、ガネーシャと一緒にいらっしゃい。あなたの好きな人参ケーキ(ガジャール・ハロワ)を作って待っているわ」

「ひと仕事……」

 その言い(よう)に、パールヴァティーは途端頬を赤らめた。これから自分が果たすべき役目を改めて認識せずにはおられなかった。