「シャニ……どうしてこのような暴挙に出た? 私はどんな恨みを買ったのだ?」

 全てを取り戻した『シヴァ』は、『パールヴァティー』の肩に手を置いたまま、横で立ち尽くすシャニに静かに問うた。記憶を奪い、人間界に命を授からせてまで成された意味を、シヴァには気付けていなかった。

「だから私はお前を(うと)んだのだよ、シヴァ……お前は万能でありながら、欠如した私を(いや)しめたのだ。(はずかし)め、(さげす)み、ただ(あわれ)みの(まなこ)だけを私に注いだ」

 シャニはこめかみに汗を光らせ、口惜しそうに(わら)った。

「私の眼が(よこし)まであることを知りながら、お前は息子ガネーシャの誕生披露に私を招いたのだ。この邪眼が見た物全てを壊すことを知りながら、お前達は私に息子を見てやってくれと願った。覚えているか? あの瞬間を……私の眼がガネーシャの眉間に合わされたあの時を……案の定我が眼はお前の息子の首を飛び散らせた。なのに通りすがりのゾウの首に()げ替えて、お前は私に幾ばくの非も与えなかったあの(とき)を――」

 シャニの奥歯がギリリと音を立て食い縛られた。