【砂の城】インド未来幻想

「口づけ……」

 震えた心臓は、今度は何かに刺し貫かれたような鋭い痛みを発した。

 そんなイシャーナの傍らで、シュリーは過去を巡らせていた。あれからゾウに乗って街を闊歩(かっぽ)した際も、アムラを摘みに果樹園で過ごした際も、民から笑顔で歓迎され、他の少女達から親切を受けられたのは、きっとシャニの計らいなのだろう。ナーギニーがこの国と、妾妃(しょうひ)として見合う者であるということを、彼女自身に信じ込ませる為に――。

「シュリー、君は一体……何者なの?」

 ついに白宮の真下まで辿り着き、イシャーナは足取りを止め、シュリーを真正面から見つめた。しかし返ってきたのは、彼女の驚きの(まなこ)と意外な返答だった。

「いやぁだっ! まさかあなたまで記憶を失くしているの!? わたしはてっきり誰に聞かれるかも分からないからと危惧して、地上では知らない振りでもしているのかと……! 明日の選良披露で全てを終わりにするつもりなのだと思っていたのに……道理で……今日も動かない筈だわ」

「え……?」

 シュリーは独り興奮気味に語り、しかし最後には落ち着いて横目を逸らした。更に意地悪そうな微笑みでイシャーナを見上げてみせる。