「彼女はどうして王宮に……それに君や僕に会ってもこんな表情なのは……」

 ――まるでこの国の民のようだ。

 暗い石畳の通路を南へ進みながら、イシャーナは隣を歩くシュリーに問いかけた。自分の胸の内のナーギニーはいつの間にか眠りに落ちている。

「わたしも真相を掴むまでに、随分と時間が掛かってしまったわ。やっと原因をつきとめてナーギニーに知らせようとしたら、彼女はシャニの部屋に招かれていて……ボヤ騒ぎを起こして何とか部屋を開けさせたけど、もうシャニの毒牙に呑まれていた」

 シュリーの話す王とナーギニーとの関わりに、イシャーナの心臓はドキリと強く震えた。

 見える彼女の横顔は険しく、明らかに悔しさが(にじ)んでいる。イシャーナは依然その『原因』の意味が分からず、と共に、シュリーの口調が変わったことも不思議に思い、首を(かし)げて続きを待った。