「イシャーナ様! 良い所に……わたしは……「シュリー」です」

「シュリー? 君……生きていたのか? 此処へはどうやって……」

 驚きのイシャーナに頷くシュリー。だが説明などしている場合ではなかった。

「まずはナーギニーを部屋に戻したいのです。外の様子を教えてください」

 シュリーの真剣な眼差しは、問いかけるイシャーナの二の句を黙らせた。一度出口を振り返り、イシャーナは落ち着いて言葉を継いだ。

「シャニ様は煙を吸い込んだのではないかと心配され、迎賓館に運ばれたが、正面口には家臣や侍女、寵姫(ちょうき)候補の少女達が集まっている。もし人目に触れたくないのなら、宮殿への秘密の地下通路があるから其処へ案内しよう」

「ではそちらへ。申し訳ありませんが、ナーギニーを運んでいただけますか?」

 イシャーナはその申し出に、ぼんやり立ち止まったままのナーギニーを抱え上げ、階段の陰となる床板をめくり上げて、早速シュリーを連れ立った――。