「貴女は……残念ながら私ではなく、我が息子に好意を持っている……」

 シャニはゆっくりと呟き、それから撫でる手を止めた。

「い、いいえ……そのようなことは決して」

 包み込まれたままのか弱き手は、まるで人質に取られた幼な子のようだ。即座に否定はしたが、王の真実を確かめるような面差(おもざ)しには、瞳を合わせることは出来なかった。

「貴女はお優しい。私を傷つけまいと必死なのですね? どうぞお構いなく……イシャーナが若く美しく、誠実であることは私にも分かります。貴女が惹かれるのも致し方ありますまい」

「……」

 ナーギニーはどういう表情をして良いのか分からず、深く俯いて押し黙ってしまった。依然右手は胸元の高さで、シャニの両手に囚われている。