「まるで舞い踊る天女(アプサラ)のようでした。貴女の舞踊を拝見して、私は今一度確信したのです。明日選ぶべき姫は貴女しか有り得ないと!」

 ――……え?

 興奮気味に立ち上がり、両手を掲げたシャニを咄嗟に見上げ、ナーギニーは驚きの余り硬直した。

「ナーギニー、明日……私の指名を受け入れてくださいますね?」

 再び腰を下ろしたシャニの(まなこ)が、ゆっくりと穏やかさを取り戻しながら、少女の瞳の奥を探る。既に明日の喜びを示した眼差しに、ナーギニーは狼狽を隠すことが出来ず、と共に右手を取った王の掌に委縮した。

「どうか気を楽にして……きっと貴女を幸せにしてみせます。ご家族のこともご心配なく」

 逆側の分厚い掌が、挟み込むようにナーギニーの手の甲に覆い被さる。やがてそれは彼女の精気を絡めとるが如く、(みだ)らに撫で回した。



 その頃――。

「ナーギニー……!」

 彼女の部屋を訪れたシュリーは、テーブルに広げられた便箋に目を通すや、慌てて出口へ駆け出していた――。