【砂の城】インド未来幻想

「待っていましたよ、愛しいお方」

 シャニの部屋は黒宮上階西側の一室であった。扉を開いた途端、広い空間の真中で宝石だらけの両手が歓迎を示し、その背には眩しい程の西陽が差し込んでいる。

「お招きをいただきまして……大変光栄に存じます」

 ナーギニーは震える声でおどおどと入室した。刹那背後で扉が閉じ、振り向けば侍女達の姿はもはやなかった。

「どうか緊張はなさらずに。上質の紅茶を用意しています。少し語らいになどお付き合いください」

 肉感のある短い腕が、その身体で隠されていたテーブルセットへ、戸惑う少女を促した。

「は、はい……」

 ナーギニーは自室同様、中央に置かれた二脚の椅子の片側に寄り添う。再び勧められて席に着き、目の前で意気揚々とお茶の支度をする王を見つめた。

 寵姫選良披露を翌日に控え、このタイミングで呼ばれた意味はあるのだろうか。もしもシャニにナーギニーではない標的がいるのであらば、その前に(もてあそ)べる対象を、全て吸い尽くしておこうとの算段か。

 自分に与えられた部屋とは格段に違う、絢爛(けんらん)豪華な装飾も調度にも、目を奪われている余裕などなかった。これから明かされるであろう招待の理由に、全身の細胞が逃げ出したいと肌を突いた。