南インドの古典舞踊バラタナーティアムは、元来寺院から発祥した踊りといわれている。朝夕地母神に捧げられた巫女(デーヴァダーシー)による奉納舞を祖とし、のちに藩王(マハラージャ)に保護され、宮廷舞踊として発展を遂げた。

 ナーギニーは開始を告げるように、「アラマンディー」と呼ばれる基本のポーズに入った。膝を外側に開き腰を落とす。菱形に形を成した下半身の中心で、幾つもの美しい(ひだ)がヒラリと揺れて落ち着いた。

 刹那ヴァイオリンやフルートがメロディ(ラーガ)を奏で、小さなシンバル「ナットゥヴァンガム」と両面太鼓の「ムリダンガム」がリズム(ターラ)を刻む。それらに乗せた朗々と響く男性の歌声が、張り詰めた空間を(なご)やかに変えていく。少女は軽快に全身をくねらせ、化粧の施された瞳と唇・赤く塗られた手指と足の動きで物語を紡ぎ始めた。カタックと同様に足首に巻きつけられた何十もの鈴が、踊り(ヌリッタ)感情表現(ヌリッティア)の決まる度、目に見えそうなほどの展開に彩りを与えた。