夜が幾ら更けようとも、ナーギニーは睡眠を欲しないほど心が楽しんでいた。元々手先が器用なのか、シュリーの教え方が手慣れているのか、刺繍も舞踊も淀みなく彼女の一部となっていった。白い布が少しずつ色糸を(まと)いながら、脳内に映し出された絵画を描いていく。手拍子でリズムの取られた身体の動きが、徐々に物語を紡いでいく。恋しい気持ちが奏でる陰陽の表情は、既にそれを知った少女には、もう難しい表現ではなかった。

 シュリーが止めなければ、朝を迎えてしまいそうな勢いだった。それをどうにか押し留め寝台に(いざな)う。「続きは明日ね」そう諭して髪と頬を撫で、シュリーもまた名残惜しそうに、ナーギニーの部屋を後にした。

 四日目となった翌朝も日課となった全てを終え、この度は一昨日仕立ててもらった薄翠色のハーフサリーを身に纏った。

 リスは一層(なつ)いたらしく、ついにはナーギニーの掌からバナナの欠片(カケラ)を受け取った。朝食と共に現れたシュリーは、ハーフサリーを飾るアクセサリーの中に、「ブラウスの中に身に着けると良いわ」と助言を与えながら、サファイアの指輪を通す為の金のネックレスをひっそりと渡した。