イシャーナの推測した通り、少女達は黒宮東側の庭園に集められ、昨日同様シャニの案内で西の庭園にて自由時間となった。早速王宮側の並木の内、河より三番目に近い幹に歩み寄る。この沙羅双樹(シャラノキ)は他に比べてひときわ高く太さも際立っていた。まずは根元の辺りを注意して一周したが何も見つからず、次の一周は自分の目線の辺りに刮目(かつもく)した。するとそれよりやや高い位置に、縦に細長い樹洞が見えた。グッと背伸びをして中を覗いたが、暗くて良く見えない上に特に何も居る様子はない。

 が、諦めて伸ばした足裏を戻そうとした瞬間、何かがキラリと光った気がした。ナーギニーは今一度背伸びをし、恐る恐る手を差し込んでみれば、触れたのは紙の質感と、金属らしき細い輪だった。

 両方を指で優しく挟み、逆の掌にそっと乗せる。小さな淡い水色の封筒と、そして――ひよこ豆(ガルバンゾー)ほどの卵型をした、碧い宝石の()め込まれた金の指輪が其処にあった。