ドームの天井中心に近付いた陽の光は、緩やかに流れる川面(かわも)に反射し、あたかも金の魚群が飛び跳ねる幻影を見せていた。

 庭園の西、沙羅双樹(シャラノキ)が影を作る根元に隠れて、ナーギニーは独り河の流れを目で追いながら、昼食までの時間をやり過ごすしかなかった。

 振り向けば短く刈られた芝生の上で、追い掛け回したり転げたりと、少女達が楽しそうな歓声を上げている。自分はどうしてあの輪に入ることが出来なかったのか……彼女達と何処にどのような隔たりがあったのか、集団の中で生活したことのないナーギニーには、その原因も理由も手繰(たぐ)り寄せることが出来なかった。

 それでも時間は戻ることなく進み続けるのが常だ。いつしか(うたげ)の刻が迫り、あの黒宮の最上階に再び集められた。イシャーナの苦悩した表情を想えば、彼がこの席に招かれぬことが最善であったが、それでも会いたい気持ちが微かに彼の同席を願っていた。けれど乾杯が食事の始まりを告げても、イシャーナの柔らかい声が現れることはなかった。

 全員に平等であるようにとの配慮なのだろう、前日と席順は異なっていた。ナーギニーはシャニから一番遠い南東の隅となり、お陰で必要以上のやっかみや緊張を回避することが出来た。少しばかりだが解放された心の余裕が、料理の味わいを深く堪能させてくれた。