【砂の城】インド未来幻想

 ナーギニーは身を縮込ませ、深く俯いて列の最後尾に付いた。宮殿の正面扉を抜けて、この度は基壇を降り、時計回りに王宮の方角へ向かう。白宮と黒宮の西側には、人工河を挟んだ広大な庭園が整備されていた。

 各城の中央を飾る、敷地を四分に仕切った精密な十字水路池(カナール)ではなく、街路樹のように整列した沙羅双樹(シャラノキ)が、挟まれた自由な空間を見守るように林立している。その木々の真中を進み河岸に辿り着く手前、小さな白い背中が見えた――シャニ。

「昨夜も良くお休みになられたかな、お嬢様方」

 川面(かわも)を見渡せるよう置かれた玉座から立ち上がり、振り向きざまに質問を投げた王へ、満面の笑顔と頷きを返す少女達。それからシャニは全員を(いざな)いながら、この西の庭園・その隣に建つモスク(マスジド)・宮殿を彩る四分庭園(バギーチャー)・東に配された迎賓館(ミフマーン・カーナー)を案内し、西側と同型の涼やかな空間を造る東の庭園で彼女らを休ませた。

 シャニを取り囲むように青い草地にしゃがみ込んだ面々は、沙羅双樹(シャラノキ)がたわわに咲かせる白い花房をうっとりと見上げた。大振りの葉に対して、花弁は小さく可憐だが、集まれば香り高く豊かだ。無邪気に花々と(たわむ)れる風の神ヴァーユが、ジャスミンのような芳香を彼女達に降り注いでくれた。