【砂の城】インド未来幻想

「……! あら、まぁ……ナーギニーったら、肌身離さず隠していたの!? 心配させて~もうっ!」

「か、隠していたつもりじゃ……夜はとても寒かったので、これを抱えたらちょうど暖かくて……」

 驚きに目を丸くしたシュリーは、恥ずかしそうに言い訳をしたナーギニーへ、ぷうっとふくれっ面をしてみせた。お次にキッと睨みつける。そんな目まぐるしい表情に、ナーギニーはこらえ切れず吹き出して、途端二人は笑い転げた。お互い大切な物は何も失わずに済んだのだ。何を嘆くことがあろう。

 荷を乗せたラクダによじ登ったシュリーは、その中身から数切れの乾燥したバナナスライスを取り出した。十分とは言えずとも二人の心身が満たされた頃には、既に太陽は目の前に顔を出していた。

 時折小休止を入れながら、シュリーは熱波渦巻く砂の大地を、二頭のラクダを急かし進ませた。次に現れるベートワー川との合流地点が、砂の城直轄地の境界となる。遅くとも明日の正午までに辿り着かねば、迎えの使者と会うことは叶わない。せめてその時刻まで――シュリーはそんな焦燥を隠した淡い微笑で、ナーギニーを励まし支え続けた。