何事もなく訪れた二日目の晩、雲を燃やすような赤々とした太陽(スーリヤ)は既に沈み、辺りはすっかり闇に包まれていた。不思議なことに使者達もラクダ達も、少女二人とは違い歩き続けているにも関わらず、全く疲れを見せる様子はなかった。あの初めての休憩から小一時間後には昼食を、夜が更けてから簡素な夕食を提供されたが、それ以外はこちらから申し出なければ、ラクダの歩みは一切止められることはなかった。夜通し移動を続けることで、やっと境界まで辿り着く程の遠い道のりなのだ。だとしても、この平常を保ち続ける一団は異様としか思えなかった。街を出て以降、先頭で導く馬に乗った侍従のみが言葉を交わすが、それも最低限の説明に限られる。時々シュリーはたわいもない質問を故意に投げてみたが、殆どは通例の返答か、さもなければ振り向きさえもされないという有り様だった。

 砂漠の夜は日中とは正反対に急激に冷え込む。少女達は自分の荷から有るだけの衣服を重ねて暖を取ったが、使者達は相も変わらず薄着のまま、何の感情も見せぬ平然とした顔で足並みを揃えた。(ソーマ)の照らす砂の道は、少々風は強いが穏やかであった。シュリーは皆に申し訳ないと思いながらも、ラクダの背でうたた寝を始めた。反面ナーギニーは大波に揺られる小船の如く、危うい揺らぎに全てを(さいな)まれながら、昨晩と同じ眠れぬ時を過ごした。