「大丈夫? ナーギニー」

 そんな調子ではなかなか会話もはかどらず、特にナーギニーはまだまだ慣れないラクダの背に、しがみつかねば落ちてしまいそうにおぼつかない。時折心配そうに掛けられる横からのシュリーの声に、ナーギニーは何とか首をそちらに向け、苦笑いを浮かべつつも大丈夫だと明るく応えてみせた。

 三時間の(のち)、雲間から太陽が覗き照りつけた頃、ようやく無いよりはましな程度のオアシスを見つけた二人は、初めての休憩を取った。幹はひょろりと細長いが、数本タマリンドの木が密集している。見上げた先には何とか木陰を作ってくれるシダのような葉が重なり合っていた。残念ながら実はなっていないが、その果肉を熱湯に溶かせば美味しいチャツネが作れる筈だ。

「大丈夫? ナーギニー」

 シュリーはもうこの半日で、口癖のようになった質問の言葉を再び唇に乗せた。根元の砂の上に腰を下ろし、ヴェールを取り去るや陰の冷気を含んだ風が、汗の浮き出た首筋を拭った。