=優勝者は、二十五番、ガルダ村、シュリー!=

 自分の発した愛しの名は、低い声と舞い上がる砂にこすられ、辿り着く前に掻き消されてしまった。少女はその波紋に(はば)まれるが如く、一瞬にして駆け寄る足先を止めてしまう。それでも真後ろに感じた微かな気配に、シュリーはまるでスローモーションのように振り返った。その表情は優勝の喜びなどではなく、「優勝してしまった」という困惑の(きざ)しを見せていた。

「ナーギニー……」

「……おめでとう、シュリー!」

 ナーギニーはシュリーの優勝を心から喜んでいた。例え最後の失敗がなくとも、シュリーの舞の素晴らしさには、足元すらも及ばないと感じたのだ。そして自分が望んだ道をシュリーが進んでくれるのであれば……これから待ち受ける我が身の困難も、きっと受け入れられると思っていた。

「シュリー、早くシャニ様の(もと)へ……」

 笑顔で促すナーギニーを前にして、シュリーは戸惑いを隠せなかった。つい手を伸ばし彼女を抱き締める。どうしてこんなに健気(けなげ)なのか、愛らしいのか……その柔らかなぬくもりを(いだ)いて、胸の内の(はかな)げな少女にシュリーは自分の気持ちを伝えた。