「梨乃先輩と話してる時の郁也先輩はいつもニコニコですっ」
「だよなー。 この前なんて鼻歌交じりで作業してたしー」
「えっ、それは初耳っ」
「ほら、梨乃先輩が手作りのおやつ持ってきてくれた時があったじゃん? それを受け取ったあとの神代先輩、超ご機嫌だったんだよ」
「あっ、男子と女子が別れて作業した日っ?」
「そうそうその日ー。 鼻歌なのに超上手い。 俺らみんな聞き惚れちゃってさー」
なんて言いながら二人で盛り上がっていたら、トンネルの出口に到着した。
ようやく片道が終わった。
あとは帰るだけ。
こうやって楽しい話をしていれば怖さを感じなくていいかも?
と思っていた時、神代先輩がジーッと俺を見てきた。
「……本当に歌ってた?」
「歌ってました。 恋愛系の映画の曲…だったような覚えが」
「……記憶にない。 ゆえに歌ってない。 ということで今から走るよ」
「えっ!? 何が「ということで」!? ていうか走ったらヤバいんじゃなかったのではっ!?」
「じゃあ如月はのんびり歩けばいいよ。 俺は一人でも行くから」
ニッコリ、と怖ーい笑顔。
を見せた瞬間にはもう、先輩は走り出していた。
「ちょっ、マジで走るのかよっ!! しかもクソはえぇっ!! 待ってよ先輩っ!!」
「待たない。 あと、如月が騒いだせいで色々寄ってきてるから気をつけて」
「なんでそういうこと言うんですかぁーっ!!」
走ったらきっと幽霊に追いかけられる。
でも歩いて帰るなんて無理。 怖い。
そもそも先輩から離れるのが無理。
だったらもう先輩を追いかけて走るしかない。
必死に、必死に。
全速力で。
そうやって無我夢中で走り、なんとかみんなが居る側の出口にたどり着いた。
そして息を整えてる時に気づく。
諏訪が居ないっ!!
ヤバい。
置いてきちゃった……。



