「おぉっ、そこに居るのっ? よっしゃ撮りまくるぞーっ」
……既に幽霊が消えていることを知らない桜井先輩は、スマホのカメラを連写モードにして撮ってるみたい。
まるで新しいオモチャを与えられたばっかりの子供みたいに、本当に楽しそう……。
「……諏訪さん、桜井先輩が絡むと大体こうなるから、ソッコーでどうにかしたい時には先輩を頼るといいよ。 まぁ、出来れば先に俺か樫村先輩に相談してもらえると嬉しいです」
「あ……はい……」
「とりあえず、今日はここで解散ということにしようか」
神代先輩は私に微笑みを見せるけど、桜井先輩に視線を移した時にはもう その笑顔はなく、無の顔になっていた。
「……桜井先輩、もう何も居ないんで撮影しても意味ないですから」
「えっ、そうなのっ!?」
「目ギンギンでハァハァ迫ってきたら、そりゃあ幽霊も逃げますって。 でも最初の方には何か写ってるかもしれないんで、樫村先輩と一緒にチェックお願いします。 あとは全部削除で。 俺は諏訪さんと先に帰ります」
「……ハァ……残念……。 あ、諏訪ちゃん。 これ渡すの忘れてたけど、親御さんに書いてきてもらってねー……」
あからさまにガッカリした様子の桜井先輩が、カバンの中から一枚の紙を取り出した。
そこには、【 入会届 】と書かれている。
「クラスで配られた方の入部届は、担任の先生に提出してね。 で、こっちは俺に出してもらいたいんだ」
「……えっと……こっちは、色々と書かなきゃいけないことがあるんですね」
教室で配られた紙は、「部活動(同好会)名」「生徒氏名」「保護者氏名」を記入するだけでいい。
あとは「備考」の欄があるけれど、よっぽどのことがなければ そこに書く必要はない。
一方、先輩に渡された紙には……「生徒氏名」「生年月日」「住所」「携帯番号(本人)」「保護者氏名」「自宅の電話番号」「緊急連絡先(携帯番号または勤務先)」……と、細かい情報まで書かないといけないらしい。



