男は冷静さを欠いた動作で、レジに大きめの黒のカバンを投げるようにして乱暴に置き、湯瀬さんを恫喝した。男の怒声を聞いても、湯瀬さんは動こうとしない。恐怖で体が動かないのだろうか。いや、でも、湯瀬さんの顔に怯えは見えなかった。早くしろと急かされても、殺すぞと刃物を突きつけられても、湯瀬さんは落ち着いているのだ。
何を考えているのだろう。何を企んでいるのだろう。湯瀬さんは男を分析するかのように、じっと対象を見つめていた。初めて見る瞳の色だった。黒く、暗く、深く、全てを見透かしていそうな目。温度のない目。
湯瀬さんが、ゆっくりと瞬きをした。遠くからでもそうだと分かってしまうほど、俺は湯瀬さんに引き込まれていることに気づいた。妙な高揚感に胸が熱くなる。
湯瀬さんは、不思議な人だと感じた。強盗犯を前にしているのに、焦燥すら感じられない冷静なその姿を見ると、なぜか俺の視界はクリアになり、安心できない状況なのに安心してしまった。大丈夫だと何の根拠もなく思い、そしてそれは、現実のものとなった。
それまで男に何を言われてもほとんど反応を示さなかった湯瀬さんが、突然、レジ内の小銭を引っ掴み、刃物を持った男の顔面に投げつけて攻撃したのだ。金属音が床に響き渡る。小銭が転がって倒れ、止まる。五百円玉に見えた。
自分が脅した人間に容易く反撃され、元々興奮していた男は更に逆上し、自棄を起こすように刃物を持つ手を振り上げた。その隙を、湯瀬さんは見逃さなかった。
何を考えているのだろう。何を企んでいるのだろう。湯瀬さんは男を分析するかのように、じっと対象を見つめていた。初めて見る瞳の色だった。黒く、暗く、深く、全てを見透かしていそうな目。温度のない目。
湯瀬さんが、ゆっくりと瞬きをした。遠くからでもそうだと分かってしまうほど、俺は湯瀬さんに引き込まれていることに気づいた。妙な高揚感に胸が熱くなる。
湯瀬さんは、不思議な人だと感じた。強盗犯を前にしているのに、焦燥すら感じられない冷静なその姿を見ると、なぜか俺の視界はクリアになり、安心できない状況なのに安心してしまった。大丈夫だと何の根拠もなく思い、そしてそれは、現実のものとなった。
それまで男に何を言われてもほとんど反応を示さなかった湯瀬さんが、突然、レジ内の小銭を引っ掴み、刃物を持った男の顔面に投げつけて攻撃したのだ。金属音が床に響き渡る。小銭が転がって倒れ、止まる。五百円玉に見えた。
自分が脅した人間に容易く反撃され、元々興奮していた男は更に逆上し、自棄を起こすように刃物を持つ手を振り上げた。その隙を、湯瀬さんは見逃さなかった。



