若旦那様の憂鬱

それから押しに押した業務を足早にこなし、気付けば昼がとっくに過ぎて花が帰って来た。

花が従業員に差し入れをくれたと事務所で聞き付ける。

その饅頭をポケットに潜ませ、花が戻ったはずの茶室に足早に向かう。

襖越しに声をかけると、おずおずとした声が聞こえて、襖を開けるとやっぱりかと言う光景を目にする。

帯が固くて外せないのだ。

着物初心者の花には、着物を1人で脱ぐのはとても無理だろうと、思っていた通りだった。

苦しいだろうにと考慮して、サッサと帯を解いていく。帯は使ってこそ馴染む物で、始めの段階では硬くて苦しい為、着慣れない人は貧血で倒れる事もある。

ここ何年か、この旅館でそう言うお客様を目の当たりにしている為、帯の解き方は見様見真似でマスターした。

さすがに実践したのは初めてだが…

やっと苦しさから解放されて、花は安堵した顔で笑う。