若旦那様の憂鬱


「そういえば、ロビーで康君の写真撮影会になってたよ。柊君はいいの?」

「…ああいうのは康生に任せておけばいい。」
朝からやたら写真を撮られた柊生は、もう魂が抜かれるのかと思うほど疲労していた。

「花は少し休んでろ。俺は仕事に戻るから。」

「……私も、柊君と写真撮りたかったな。」

つい、着物の柊生を目の当たりにして写真が欲しいと思ってしまった。

「はっ?」

何故か柊生が固まる。

何でその反応?
やっぱりダメだよね…と残念に思う。

「何で…帯外す前に言わないんだ。その格好で撮るのは若干微妙だぞ?」

確かに…
帯を外した中途半端な状態はいささか間抜けだ。

「言って見ただけだよ…。」

と断ろうと思ったのに、柊生が懐からスマホを出して2人に向かってかざすから、

えっ⁉︎っと花は戸惑う。

これは、世に見るカップルが自撮りする時の体制じゃないの⁉︎

いいの?
これは兄妹として許される範囲⁉︎

「花もっと寄って。 
これなら帯辺りまで入らないで撮れるだろ?」

こんなに、背の高い柊君と顔を近付けた事なんて無いから否応にもドキドキしてしまう。

「花、小さいな。台が欲しくないか?」
若干馬鹿にされた感じでちょっとムッとする。

「柊君が無駄に高いんだよ。何センチなの?」

「…4年前に測った時は182はあったはず。
多分その時から伸びて無いだろ。」

「でも、鴨居に頭つくよね⁉︎」
もっと伸びてるはずだと花は思う。

「花は4年前から変わらないよな。」

「馬鹿にしてる?  
どうせ155センチしかありませんよ。」

予定では160センチは欲しかったのに、
牛乳を毎日飲んでも、何をしても高校に入ってから伸びる事は無かった。

「いや、小さくて可愛いよ。」

顔を寄せながら言うから破壊力が半端無い…。
顔が真っ赤になってしまう。

「ちょっと、タイム…。
もう、柊君が変な事言うから。」

真っ赤になった顔で、クスクス笑ってる柊生を睨む。

「本当の事言っただけだ。
花は可愛い、小動物みたいだ。」

ハイハイ…そう言う揶揄いは辞めて欲しい。

なんとか気持ちを落ち着かせて、再度自撮りを試みる。

「よし、後で花にも送っとく。
おっと、花と遊んでたら次の団体の来る時間になったじゃないか。

俺はちょっとフロントに行って来るから、何があったら内線しろよ。」

じゃあな。
と言って柊生はサッといなくなってしまう。