若旦那様の憂鬱


「花、帰ったのか?」

襖の向こうから声がしてドキンと鼓動が弾む。
どうしていつもタイミング良くこの人は現れるんだろう…。

「うん。ただいま…。」

「入るぞ。」

と、言うや早くズカズカと入って来た柊生は着物姿の若那様で、今日は紺色の袴姿だったから余計ドキドキしてしまう。

「脱げないのか?」

そう言って、いとも簡単に帯締めをするすると解いていく。

「えっ⁉︎ありがとう…キツくてなかなか解けなかったの…。」

「そんな事だと思って来たんだ。
帯も解いてやるから。」

そう言って、簡単に帯も解く。

お腹の締め付けが一気に無くなってホッとする。
「ありがとう。
お腹がキツくて限界だったから助かったよ。」

ハハっと柊生は笑う。

「後は自分で出来るだろ。
少し休んだらレンタル店に来てくれたらいいから。
一式頼んである。」

「ありがとう。
あと…この帯締めと帯留め柊君が買ってくれたんだってね。
みんなが可愛いって褒めてくれたよ。
ありがとうね。」
 
花がお礼を言うと、
柊生は優しい笑顔を向け、

「俺が買った事内緒にしてって頼んだのに…。 
別に兄として当たり前の事をしたまでだ。知り合いの呉服屋さんにも頼まれたしな。」
 
だとしても、妹の為にここまでしてくれるのは柊君しかいないよと、花は思う。