若旦那様の憂鬱

「あー、お腹いっぱい、苦しいね。」

帰りはまた詩織の母の迎えで帰路に着く。

「早く着物脱ぎたーい。こんな苦しいのに、昔の人って凄いよね。」

詩織がそう言うから花も同意する。

「お母さんも仲居さん達も普段着物だけど、
尊敬しちゃう。
よくこんな感じで動き回れるよね。」

「本当だよ…。
柊様だって着物着る時多いんでしょ?」

「うーん。夕方のお出迎えとかの時に着てるのかなぁ。私、普段はあまり旅館に行かないから。」

「花は将来、旅館の仕事に就かなくていいんだね。」

「私だけは自由に好きな事して欲しいってお義父さんからも言われてるの。
だから、手伝いもさせてもらえない。」

「そうなんだぁ。
私、一橋の仲居のバイトしよっかな!
柊様とお近付きになりたいし。」

「そんな楽な仕事じゃないよ…。
一日中走り回ってるイメージあるもん。
柊君との接点もあんまり無いと思うし。」

「そうなの?柊様ともっと話してみたいなぁ。」

「彼女いるんだってば。」

「彼女いたっていいんだってば。
もしかしたらもしかするでしょ。」

詩織は昔から肉食な感じで積極的に恋愛をするタイプだ。

「大学の先輩って言ってた彼氏とは別れたの?」

「そんなのとっくに別れたよー。
付き合ってみるとギャンブル好きの残念男子だったんだよねー。
私って男運ないのかなぁ。」

「あんたは取っ替え引っ替えが激しいのよ。
そんな子、若旦那様が相手にする訳ないでしょ。」
詩織の母が嗜める。