若旦那様の憂鬱

式場に無事到着して、懐かしい友達に会う。

式の終わりに集まり、写真を撮り合い近況を報告し合う。

疎遠だった友達とはメールを教えあったり、ワイワイと楽しい時間を過ごした。

「松下?松下花だろ?」

えっ?と思って振り返る。

「俺、鹿島裕樹。覚えてない?
隣の席になった事もあるんだけど。」

「あ…何となく覚えてるよ。」

元々恥ずかしがり屋の花は、男子との交流は消極的な方だから少し戸惑う。

「今日この後、空いてる?」

「えっと…友達とランチの約束があって…。」

「じゃあさ。SNS教えてよ。
また連絡するから。どっかで会おうよ。」

どうしよう……困ってしまう。

「花はダメだよ!」
突然、詩織が戻って来て花と鹿島の間に入ってくる。

2人はびっくりして詩織を見る。

「花にはそれはそれは過保護なお兄様達がいるから、お兄様達のお眼鏡に合った人しか付き合えないの。
分かったらサッサと行って。」

いつになく強めに詩織が言う。

「何だよ。松下って一人っ子なんじゃなかったか?」

「知らないの?
花のお母さんが中学3年の春に再婚して、一橋になったんだよ。」

「一橋って、あの一橋⁉︎」

「そうだよ。
柊様、康様の妹になったんだよ。最強の兄弟に勝てる気ある?」

「マジで……。」

絶望した顔で鹿島は呟いて、肩を落として去っていった。