若旦那様の憂鬱

「…はい。」
柊生は花の頭を優しく撫ぜる。

「俺は、花に見捨てられ無いようにこれからも努力するのみだ。」

そう言って立ち上がり振り返って花を呼ぶ。

「早く行かないとペンギンの餌やり始まるぞ。」

柊生が花に手を差し伸べる。

この手を2度と離してはいけないと、花は心から強く思った。


柊生は思う。幸せとは日々の中にあって決して特別な事では無い。

隣に花がいて、支えてくれる家族がいて、平和で平坦な毎日がとても大切でかけがえの無いものだと言う事に。

花はまだ若い、今はまだ咲き始めたばかりだ。
この先どんどん綺麗になって咲き誇る。

その時きっと、今よりもっと男達を魅了して止まないだろう。

結婚したからと言って安心出来る訳では無い。

柊生はそう思うと憂鬱になる。

俺はこれからも花を失わないよう、奪われないよう、誰よりも愛しみ守り大切にしていきたい。

どうか花がずっと俺のそばで笑っていてくれますように。

柊生は願いを込めて花の手をぎゅっと握り返した。

                
 fin.