若旦那様の憂鬱

「花は足ケガしてるんだから運ばなくていい。」
柊生は振り返り、慌ててボストンバックを奪いダンボールごと運んでくれる。

「車に乗ってろ。」
そう言われてしまい、ぬいぐるみごと助手席に押し込まれる。

残りのダンボールも後ろの席に運び入れてくれた柊生は花から実家の鍵を借り、家の戸締りまでして戻って来た。

「ありがとう。」

花は過保護過ぎると思いながらもお礼を言う。

「さぁ、我が家に帰ろう。」

柊生は今日1番の笑顔を見せて、花が抱いているミケ猫のぬいぐるみだけ取り上げて、後ろの座席に放り込む。

ふふふっと花は笑いながら、

「なんで昔っから、兄弟揃ってそんなにこの子達の事気にするの?」
と、ずっと気になっていた事を聞いてみる。

「…康生が何か言ってたか?」

茶トラにポンポンしながら柊生が逆に聞いてくる。

「妙に康君もミケちゃんに執着してるから。」

「…プレゼントを買いに行った時、店で偶然康生と会って、花はどっちが好きかって言い争いになったんだ……。
俺は、花は絶対茶トラだろ?って思ってた。
だけど、康生のミケ見て泣いただろ…。
あの時…かなり傷付いた…。」

えっ⁉︎
あれは2人が同じような物をくれたから、兄弟愛に感動して涙けただけよ⁉︎
と、花は思う。

「えっ?それで今までそのケンカは続いてるの⁉︎」

「康生のミケが1番なんて認められない。」
柊生は怒りがぶり返したのか、ムッとした表情のままエンジンをかけ車を走らせる。

「柊君…、私、あの時ミケちゃんが嬉しくって泣いたんじゃないよ?」
本当の事を教えなくてはと花は思う。

「はっ⁉︎」
柊生は思わず一瞬こっちを見る。

「私はあの時、同じような物をプレゼントしてくれて、私の好きな物を2人共知っててくれた兄弟愛に感動して涙が出たの。
別にミケちゃんが1番とか思った事ないよ?」

「そう、なのか……。」

真相を知って力が抜けたのか、
柊生はため息混じりに息を吐きだし運転を続ける。