若旦那様の憂鬱

片付けがやっと終わり、控え室で花の足の治療をする。

右膝が赤紫に腫れていて少し切れて血が出ている。
柊生は自分のことの様に顔を歪めて消毒をする。こんなに腫れているなら骨の方も心配なる。

「花、病院に行くべきだ。
腫れてるし骨にヒビが入っているかもしれない。」

「見た目より全然痛く無いよ。大丈夫だから、早く帰ろう。」
こんなに腫れてて痛く無いわけないのに、
痛みに鈍感なのかもしれない。

応急処置に湿布を貼って固定する。
病院に行くと相手に悪いとでも考えてそうだな。
さっきより腫れも酷くて足も曲げれないんじゃ無いだろうか。

柊生はため息を吐いて花を見上げる。

明日はせっかくの引っ越しなのに
…少しでも腫れが引けば良いのだが…。

「ありがとう、柊君。」

柊生の心配そうな顔を見て、
困った顔をする花は、
きっとこれ以上心配させないように、
痛みを隠して気丈に振る舞ってしまうだろう。

強引にでも病院に連れて行くか…。

柊生は花を抱き上げ歩き出す。

「しゅ、柊生大丈夫だってば…下ろして、
……恥ずかしい。」

腕の中で暴れる花を柊生は、
「頼むから、俺の言う事も聞いてくれ。
暴れるとここでキスするぞ。」
乞うように花を見て優しく脅す。

困った顔で俯き静かになる。

「病院へ連れてくからな。
行かないなら、明日の引越しも中止する。」

そう言う柊生自身が、
一時でも早く花と一緒に暮らしたいと思っているだろうに…。

「…はい。」
花もその事は重々分かっているので逆らえない。