「花、ごめん。怖かったよな…痛かったよな。
こう言う事もあろうかと、花から目を離さないようにしてたのに…。」
抱き上げて自分の控え室に向かう。
「しゅ、柊君、歩けるから大丈夫…。
お、下ろして…。」
花は慌ててそう言うのに、
柊生の腕は緩まる事なくそのまま運ばれる。
廊下ですれ違うスタッフ達の好奇な目が恥ずかしくて、花はひたすら俯くしかなかった。
「若旦那、花ちゃんどうしたの?」
イベントの運営スタッフの1人が柊生に話しかけてくる。
「すいません。花がちょっとケガをしてしまって、ケガの手当てをしたいので少し片付けが遅れます。」
「ああ、それは大変だ。
片付けは誰かにやって貰うから、早く帰りなさい。
花ちゃん、いろいろ動いてくれて助かったよ。ありがとう。」
そう花に声をかける。
花が柊生に下ろしてとせがみ、やっと地面に足がつく。
「こちらこそ、ありがとうございました。
運営に携わらせて頂きとても勉強になりました。」
花は頭を下げて挨拶をする。
「ケガは大した事無いので大丈夫です。
片付けを最後までやらせて下さい。」
花はそう言って、ステージに向かって歩き出す。
「花、せめて治療してからにしてくれ。」
柊生は運営スタッフに一礼して、花を急いで追いかける。
「柊君、心配し過ぎだよ。大した事ないから大丈夫。」
花は笑ってそう言って、さっき片付けていた続きをやり始める。
こう言う時の花は何が何でもやり通すと言う事を知っている柊生は、花を見守りながら、片付けを手伝い始める。
いつの間にかアシスタントの2人の女性も駆けつけ、手伝い始める。
そのうちの1人が、片付けながら花に話しかけてきた。
「ごめんなさい。
今まで、片付け手伝わなくて…。
私達、若旦那様のファンで彼に近付きたくて参加したの。まさか婚約者がいるなんて知らなくて……。」
「いえ、気にしないで下さい。
彼がモテるのは分かっていますから、
私は大丈夫です。」
花はニコッと笑う。
さっき花を突き飛ばしてしまったアシスタントも駆け寄って来て、
「ごめんなさい。突き飛ばしてしまって…。
痛かったですよね。」
花に頭を下げてくる。
「大丈夫です。これぐらい大した事ありません。気にしないでください。」
花は微笑み彼女にも優しく接する。
柊生はそれを少し離れた所から見守る。
花は凄いと柊生は思う。
他人の負の心を洗い流す程の、
優しさと気丈に振る舞うその強さが眩しくもある。と、同時に心配にもなる。
今までの経験がきっと否応にも、
彼女をそう強くしたのだ。
本当ならもっと怒って、泣いて、痛いと訴えるべきなのに…。
せめて自分にだけは、彼女が感情を出せる場所で在りたいと切に願う。



