若旦那様の憂鬱

1時きっかりに審査発表は始まり、
ミス温泉美人のグランプリに選ばれたのは甘味処で働いている女性に決まった。

誰から見ても清楚で綺麗な大人女子。

柊生から花束を貰い、一緒に並んでいる所をステージ脇から見ていた花がズキンと心痛める。

ああいう人ならきっとみんなが納得するんだろうな…。

ステージでスポットライトを浴び、
キラキラと輝く2人を見ていられなくて目を伏せる。

準ミスグランプリは先程、柊生にお菓子を持って来た人が取った。

そしてなんと、特別賞には花の親友の詩織が選ばれたのだった。
ペアの国内旅行券を貰って喜んでいる。

花は詩織に拍手を送る。

凄いな、詩織ちゃん。

花は自分の事のように嬉しく思う。

午後も何とか時間通りに終わり、柊生はホッと息を吐く。

「お疲れ様でした。」

賞品授与の為に来ていた前嶋が、柊生に挨拶をしに近付いて来る。

「前嶋さん、わざわざご参加して頂きありがとうございました。」
柊生も頭を下げて挨拶をする。

「あの…、要らぬお世話かと思いましたが、先程、良からぬ噂を聞いたので。
お耳に入れておいた方が良いと思いまして。」

「どのような事ですか？」
柊生は聞き返す。

「花さんの事を良く思っていない、
貴方のファンの方が会場にもいらっしゃるようで…花さん大丈夫ですか？
嫌がらせされてませんか？」
前嶋は小声でそう柊生に伝える。

「花の事を気にかけて下さりありがとうございます。
今日は出来るだけ離れ無いようにしてたのですが…後半、少し元気が無いのが気になります。」

片付けを始める花を目で追いながら柊生は、
心配そうにそう話す。

「ご存じの様で安心しました。
出過ぎた真似をすいませんでした。」
そう頭を下げて前嶋は帰って行った。