若旦那様の憂鬱

階段を花の足を気にしながらゆっくり降りる。

階段下にまた、あの男が立っている…。
懲りない奴だな……。

「今日はお疲れ様でした。花さん足は大丈夫ですか?」

「はい、おかげさまで、そんなに痛く無いです。いろいろとご迷惑をお掛けしました。
ありがとうございました。」
花が丁寧にお礼をする。

「前嶋さんもお疲れ様でした。また、本番の時はよろしくお願いします。」
俺は、軽い挨拶程度で別れようと試みる。

「あの……。お疲れのところ大変申し訳ないのですが、出来れば花さんとお話しをしたいのです。
自分自身の事で大変恐縮ですが、今の気持ちのままでは、先にも進めず貴方に未練が残ってしまう。」

正々堂々と、そう告げる前嶋に花は困り顔で俯き思案している様だ。

俺も敢えて口を挟まずしばらく見守る。

「分かりました…。あの、今日はとりあえず柊君を休ませてあげたいので…明日とか仕事終わりにどうですか?」

「私は外回りが多いので、直帰出来ると思います。」

「柊君は、抜けられそうな時間帯ある?」

「明日は夜勤だから夕方1時間休憩が入る。」
俺も早いうちに決着をつけたいと思い、
花の提案に乗る。

「では、夕方6時にこの向かいの喫茶店でどうですか?」

花がそう言う。

「構いませんそれで。ありがとうございます。」
前嶋は頷く。

「大丈夫。」
俺も花に笑顔を向けそう答える。