若旦那様の憂鬱

昼を挟んで後半20人の審査に入る為、昼休憩に入る。

花とどこかで昼食でもと思い裏手に回る。

すると、廊下の片隅で前嶋が花に話しかけている姿が見える。気持ちが騒つくのを無理矢理抑え足早に近付く。

「お疲れ様。」
先に花に話しかける。
花はホッとしたような顔で俺を見て頭をペコリと下げ微笑む。

「お疲れ様です。」

「前嶋さんもお疲れ様です。
どうですか?候補者に好みのタイプでもいらっしゃいましたか?」
にこやかに、しかし、したたかに牽制しつつ花から離す。

「お疲れ様です。審査員も大変ですね。みなさん素敵な女性ばかりで甲乙付け難い。
花さんが出ていたら、僕は絶対花さんが1番だと思いますが。」

相手もなかなかのしたたかだと思いながら、
「花は残念ながら、人前に立つのは苦手なので裏方で充分ですよ。」

そう言って、花を何気に背に隠しながらその場を離れようと試みる。

「審査は午後もありますので、僕らは昼休憩に行って来ます。前嶋さんは今日は一日中こちらで大丈夫なんですか?旅行代理店は週末ほど忙しいでしょうに、お手伝いありがとうございます。」

そう頭を下げて、花の背中を軽く押して微笑み、先を歩くように促す。

「私も、ご一緒しても構いませんか?」

前嶋貴文、なかなかの厄介者だ……。

花に聞く辺り確信犯だ。

「えっ…あの…。」
花は俺を見上げて助けを求めてくる。
微笑み返しながら、

「すいません、せっかくですが野暮用がありまして、良かったらお弁当も出ますのでそちらをどうぞ。」
そう言って、踵を返す。

花も、
「すいません…。」

と小さく頭を下げて、俺の後ろをちょこちょこと着いて来る。

「大丈夫だったか?」
振り返り小声で聞いて花の様子を伺い見る。

うんうんと頷き、笑顔をくれるからホッとする。