若旦那様の憂鬱

ああ、確かにそうだと柊生は頷く。

商店街で買い物しないで、こんな所でこっそり買い物してるんだな。
柊生は挨拶をしようと思い立つ。

カートを隅に置いて花の手を取り会長夫妻に近付く。

「こんにちは。
大石会長、先日はお疲れ様でした。」

名前を呼ばれて、会長は振り返る。

が、はて、誰だろう?と、思う。

「一橋です。すいません、こんな格好で…。」
そう言って爽やかに笑う笑顔は、確かに一橋の若旦那。

「ああ!若旦那か!!
まったく気付かなかったよ、申し訳ない。」

そう言って頭をカキカキ隣をみると、可愛らしい女性が控えめに頭を下げてくる。

…これまたべっぴんさんだなぁと思って観ていると、手を繋いでいる事に気付く。

お、もしや彼女が若旦那の噂の恋人か⁉︎

「こちらのべっぴんさんは?」

「ご紹介が遅れました。僕の妻です。」

「えっ!!」
会長はびっくりする。

「えっ⁉︎」
これには花もびっくりして目を見開き柊生を見る。

「はははっ、すいません。婚約者の花です。」
爽やかに笑って言い替える。

花は、何を突然言っちゃってるんだろう…と、瞬きを繰り返し柊生を見つめ続ける。

「ああ、婚約者さん…。
花さん⁉︎って、あの花ちゃん!!
うん?……妹さんじゃ無かったか?」

「元々父の養子では無く、彼女は僕の許嫁でして、小さい頃からそう言う事で決まっていたんです。」

実は、咄嗟の思いつきでそう言ったが、顔の広い会長にそう伝えておけば、兄妹では無いんだと世間に知らしめる事が出来るのではと思い立ったのだった。

「そうだったのか。花ちゃんはいくつになったんだい?一橋旅館に来た頃は10歳ぐらいじゃなかったかな?」

「覚えていて下さって嬉しいです。今年20歳です。」

「あれからもう10年も経ったんだね。」

会長はしみじみ思いながら、
2人を見るとお似合いじゃないかと納得する。