若旦那様の憂鬱

帰りの車の中、花は柊生に頭を下げる。

「不束者ですが、これからよろしくお願いします。
…って、先に言わなきゃいけなかったね。」

2人笑い合う。

「いいんだ、これで俺達は。
これからゆっくり夫婦になっていけばいい。
それになにより、花は俺のだって思うだけで気持ちが安定するから大丈夫だ。
すぐに引越して来いとは言わないし、花のタイミングでいい。」

柊生の優しさに心底、この人を好きになって良かったと花は思った。

「ありがとう。」

「俺は、花にがっかりされない様に、良い旦那にならなきゃなって、身が引き締まる思いだが。」

「がっかりなんてしないよ。
いつも気を張ってる柊君だから、せめて私の前だけはありのままの柊君でいて欲しい。
だから、頑張らなくて良いんだよ。」

「花だけはいつもそう言ってくれるよな。
その言葉に、どれだけ俺が救われてと思ってる?」

柊生が不意に手を握ってくるから、花はビクッとして、ドキドキして緊張してしまう。

「…少しは俺に慣れてくれ。」
柊生は苦笑いしながら、

「もう少し、一緒にいたい。」
と、花を家に誘う。

「ねえ、柊君の家のキッチン使わせてくれる?夕飯何か作るよ。」

花がそう提案すると柊生が、

「あそこは既に花の家でもあるんだから、好きに使ってくれたらいい。だけど、何も無いから今から買い出しに行こう。」

「包丁やまな板は?」

「かろうじてある…。
誰かを家に入れる事は無いと思ってたし、ほぼ自炊はしないから、必要最低限の物しかないんだ。」

「この前作ってくれた朝ご飯は美味しかったよ?」

「あのぐらいは誰でも作れるだろ。」

「いやいや、康君は絶対出来ないよ。」

「アイツはやらないだけで、やれば出来るんだよ。」
笑いながらそう言う。