若旦那様の憂鬱

「…柊君もごめんね。こんな話し聞きたくなかったよね。」

花の目から涙が溢れる。

「大丈夫だ。泣くな……。
話してくれて、ありがとう。
今よりももっと、花が大事で大切に思う。」

柊生はそう言って、ただひたすら花が泣き止むまで背中を撫ぜて、涙を拭き続ける。

そうしているうちに花の震えも止まって、気持ちも落ち着いてくる。

「もう…大丈夫だよ。」

花が離れようとするのに、
「もう少しこのままで。」

と柊生はなかなか離してくれない。

「…花、最後に一つだけ……。花は、どこを…火傷したんだ?」

花を労りながら、顔色を伺いながらそう柊生が問う。

花はおもむろに、足の裏を指挿す。

柊生は目を見開きハッとして息を呑む。

「半年ぐらい傷を庇って歩いてたから、今でも歩き難くて転びやすいんだって…お母さんは心配するけど。
今は全然痛くないんだよ。」

花はあえて明るく言う。

柊生は、花をぎゅっと抱きしめ歯を食いしばり、
「絶対許さない。その男、俺は絶対許さない。」

今度は花が柊生の、広い大きな背中を抱きしめて一生懸命に撫ぜる。

「大丈夫、大丈夫だよ、柊君。私、痛かった事もあんまり覚えてないから。
心配しないで、大丈夫だから。」

何度も何度も花は、大丈夫だと繰り返す。